日々のいろんなことをあれこれ。
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まだまだ続く、武道館ライブ小ネタ第三段。
武道館、というよりは、7月の星組ライブネタがメインです。
ラチェット&マリアの会話。
レニがあまり出てこないのはうちのサイトでは非常に珍しいかもしれない。
(でも微妙にマリレニです)
武道館ライブ?小ネタ『あなたに、伝えたいこと』
帝都・巴里・紐育…三都市合同の夢の舞台は、大成功に終わった。
その夜、劇場では打ち上げのパーティが盛大に開催された。
会場には色とりどりの料理や酒が並び、カンナやリカは目が輝いている。
乾杯もそこそこに料理に手を出そうとするふたりをマリアとラチェットが窘める…そんな光景が同じ場所で見られるだなんて、思ってもみないことだっただろう。
乾杯の挨拶は隊長である大神と大河によって手短に、音頭は盛大にとられた。
それから先はもう、裏方もみんな揃って和気藹々と飲めや歌えのどんちゃん騒ぎを繰り広げている。
そんな中、なんとなく喧騒から離れたくなったマリアは、そっと会場を抜け出してテラスに来ていた。
会場にいる間は気がつかなかったが、いつもより飲むペースが速かったらしい。
いつもの舞台がはねた後とはまた違った達成感と高揚感に、どうやら柄にも無く舞い上がっていたようだ。
頬に受ける秋の風で酔いを醒まそうとマリアは目を閉じる。
「ハイ、レディ?お隣よろしいかしら?」
そんなマリアに背後から声をかけたのは、腰まで伸びた金の髪を夜風に靡かせる女性だった。
「ラチェット…?」
予想外の客人に、マリアは少し驚きの混じった声をあげる。
ラチェットは笑顔のままマリアにひらひらと手を振った。
彼女と顔を合わせるのは、もう随分と前に感じられた。
隊長である大神が不在の際、一時は帝都花組に所属していた彼女。
そして、あのときの事件。
あれから時間が経ち、ラチェットは新しく設立された紐育星組の副指令としてその任を命じられたというのは知っている。
その後も通信などで話を聞くことはあっても、直接顔を合わせることはなかった。
それは、帝都花組の誰もが同じだった。
今年の夏のあの日までは。
つい先日…といっても2ヶ月ほど前だが、花組からレニと織姫が紐育に研修という名目で旅行に出かけていたのだ。
彼女たちは、現在の華檄団の試験的存在であった欧州星組のメンバーであり、ラチェットや紐育星組の九条昴と行動を共にしていた。
レニは星組に所属していたときのことを語るのがあまり好きではないらしく、自分も詳しいことは知らないのだが…。
出発前は影が差し、どこか不安そうだったレニの表情は、『ただいま』と帝劇に帰ってきたときと全く違っていた。
まるで、心の呪縛が解けたかのような笑顔。
そうして、以前よりももっとよい演技が出来るようになったのだ。
妙な勘繰りなどはしたくなかったが、それでも気になってしまうのは事実。
それが、自分の愛おしい少女のことならば尚更のこと。
「…この間は、うちのレニと織姫がお世話になったわね」
「いいえ、彼女たちは私の元部下ですもの。元上司としては当然のことよ」
どこか含みのあるマリアの言葉に、ラチェットも笑顔でさらりと返す。
「……」
「……」
ふたりの間を、秋の夜風と共に微妙な空気が流れた。
「…ふふっ」
そうして、どちらからともなく笑い出す。
「お世話になったのは私の方かもね。…みんなと、少しだけ話をしたわ。思い出話なんて言うほど美しいものじゃないんだけど」
胸に手を当て、ラチェットは静かに語りだした。
「あのときは言えなかった『ありがとう』を伝えたの。…そうしたら、心がすごく軽くなったわ。そして、温かくなった」
消してしまいたい過去だった。
失敗など許されないと思っていた自分にとって、欧州星組としての結果は汚点でしかなかった。
だけど、今は違う。
『人は誰も、ひとりじゃない』
仲間の大切さを教えてくれたのは、他でもない今の仲間たちだったけれど。
いつだって、自分の周りには仲間がいてくれた。
――だから、今なら、心から言える。
「マリアも、花組のみんなも。あのときはごめんなさい。…そして、ありがとう」
ふたりの間を、さあっと秋の風が通り抜けていく。
一際高い秋の夜空に浮かぶ星々だけが、静かにふたりを見守っていた。
「…似ているのかもしれないわね、私たち」
「え?」
「私も、随分と変わったの。…花組の、みんなのおかげで…」
言葉少なく、だが優しくマリアはラチェットに微笑みかけた。
その言葉に少し戸惑っていたラチェットは、やがてその笑顔につられるように微笑む。
「…それじゃあ、再会とライブの成功を祝して…乾杯しましょう」
そう言って、ラチェットは隠し持っていたシャンパンとフルートグラスをマリア前に掲げた。
その瓶に貼られたラベルを見てマリアは驚く。
滅多にお目にかかることの出来ないポメリーの最高品種は、恐らく会場からくすねてきたものだろう。
「あら、いいの?」
「いいのよ、あんな味も香りも分からない飲み方をされたら自慢の愛娘が可哀想だわ」
ルイーズの名に掛けたのだろう、そんな軽い冗談にふたりは笑いあった。
コルクを開け、フルートグラスにシャンパンを注ぐ。
グラスを軽く合わせ、乾杯、と言い合いながらふたりは微笑みあう。
フルーティーな気泡が喉ではじけて、今日の舞台の成功をねぎらってくれているような気分になった。
そうして、暫くふたりで他愛のない話に花を咲かせていたのだが…。
「…さ、冷えてきたし…そろそろ会場に戻るわ」
2杯目のシャンパンを味わっていた矢先、突然ラチェットがそう口にした。
あまりに唐突な退席の言葉に、どうしたの、とマリアが問いかけるよりも早くラチェットは言葉を続ける。
「あまり長居すると怖いから、ね」
そう言って笑うラチェットの視線の先を追えば、自分の姿を探して会場を抜け出したのだろう銀髪の少女の姿。
テラスでふたりきりの自分たちを見つけたレニの顔には、明らかに嫉妬の色が浮かんでいる。
「後はよろしくね、マリア。それじゃあ」
軽く手を振りながら、すれ違いざまにレニにもにこりと笑顔を向け、颯爽とラチェットは戻っていった。
その背中は凛としていて、同じ女優という立場でも感心してまうほど。
「マリア」
ラチェットの背中を見送っていると、入れ違いにこちらにやってきたレニに名前を呼ばれた。
その声には、圧倒的に不機嫌な声が含まれている。
後はよろしく、というのは、彼女のフォローを全て任せた、ということだろう。
とんでもないお土産を置いていってくれたものだ、とマリアは内心でラチェットを恨む。
どうやって弁解するべきなのか、そもそもやましいことは何も無いのだから弁解というのもおかしいのだろうか、とマリアは考えていたが、愛おしい少女を前にしたらそんな言葉はどこかへと消えていってしまった。
かわりに浮かんだのは、もっと大切な一言で――…。
一番伝えたい言葉は、きっとたった5文字。
『ありがとう』
おしまい。
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ライブ後書き逃げ第3弾。
なんかラチェマリっぽくなった気がするのななんでだぜ…。
でもラチェットとマリアって仲良くなりそうな気がするなぁ。(根拠は全く無い)
早く紐育星組ライブDVDが見たい!見たい!超☆見たい!!
そんで時系列がもぅよくわかんなくなっちゃったので開き直り。
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