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日々のいろんなことをあれこれ。

   
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母の日に。※小ネタ
母の日にちなんで。

マリア&かえでさんの会話。


読まれる方は下から↓


――花を、もらった。


「あげる」


それだけ告げ、小さな花かごを差し出した少女。
表情から読み取れない彼女の感情がぶっきらぼうなのではなく、照れているのだということが分かるのは彼女との付き合いがそれなりに長いからなのだろうか。
ありがとう。そう告げると、少女は納得したように頷いてそのまま踵を返し去ってしまった。
手の中には、瑞々しい生花が残る。
――何事かは分からないが、とにかく、花をもらった。


新緑の季節、5月の半ば。
劇場の廊下を歩くかえでの足取りは軽やかだ。
手には赤いカーネーションの花かご。
知らないうちに、桜色の唇からは歌が零れる。春の歌だ。
動きに合わせてほんのりと香る瑞々しい生花の香りに、かえでの心は満たされる。


「あら、」
曲がり角を曲がったところで掛けられた声にかえでは我に返った。
廊下の向こう側から歩いてくる女性の姿を認め、浮かれていた自分を見られたことに少しだけばつの悪い表情を浮かべる。
幸か不幸か、その女性というのはマリアだった。


手に持ったカーネーションとかえでを交互に見たマリアは、やがて納得がいったように笑みを浮かべた。
「レニから、ですね?」


「えぇ…よくわかったわね、マリア」
花の贈り主を一発で当ててしまったマリアに、かえでは感心した声をあげる。
ヒントになるようなものは特に無かったはずだ。
「ふふ、簡単ですよ」
名推理を披露した探偵は、驚くかえでを見てくすくすと笑みを零す。



「貴女も貰ったの?」
事前に彼女から聞いていたのか、マリア自身も花を貰ったのか――浮かんだ可能性を後者に絞り、かえでは問いかけた。
「いえ…でも、今日は貰えることはないと思いますよ」
「貰えないの?」
「いえ、私自身、今日は貰うつもりは…」
「?…どうして?」
「え?」
いまいち会話が成り立たっていないことに気付いたのはふたり同時だった。
ただ、その原因を先に理解したのはマリアの方だった。
「…もしかして、かえでさん気付いていなかったんですか?」
「気付いてって…何が?」


「今日は、『母の日』ですよ」


マリアの言葉にかえでは一瞬きょとんとした表情を浮かべ――「あらあら」、と困ったように笑う。
その反応が拒否ではなく、純粋に嬉しい感情であることはマリアにもすぐに理解できた。


「いいんですか、『お母さん』で」
「いいのよ」
母親なんて歳じゃないんだけどね、と呟きながらも、かえではやはり嬉しそうだ。
手に提げていた花かごを胸の前に抱き、微笑んで見つめる。
――まるで、送り主を見つめるような優しい瞳で。


「母でも何でも、感謝されていることにはかわりないもの」
「…ふふ、そうですね」


花かごいっぱいのカーネーションに隠れるように添えられたメッセージカードを見つけ、ふたりは笑いあった。


『かえでさん、いつもありがとう』


Mother's  day


********************************


今日は、『母の日』ですよ。
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