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マリレニ武道館ライブ小ネタ?『愛を伝えて』
人生はノリと勢いと(以下略)

というわけで、マリレニ武道館ライブ小ネタその2。

今回は少しくらいは武道館ライブ(主に曲)に関係あるネタです。
でもマリアが全然出なかったw

織姫&レニでマリレニなかんじ。


マリレニ 武道館ライブ小ネタ?『愛を伝えて』


朝晩だけはようやく秋を感じられるようになったある日。
歌劇団…正確には華檄団のある三都市合同で、一夜限りのスペシャルライブが開催されることになったのだ。

そのライブのセットリストが、今日の午前中に発表された。
限られた時間の中の合同ライブということで、みんなで歌う曲が多かったのだが、その中でもメドレーの中で自身のソロ曲があった織姫は上機嫌だ。
『アラビアのバラ』…その曲を口ずさみながら足取り軽く織姫は劇場を歩き回る。
やがて、中庭に気になる人物の姿を見つけ、彼女の足は中庭へと向かった。

中庭のベンチに座り、足元で行儀よくおすわりしている子犬の頭を撫でる少女は心ここにあらず、といった表情だ。
時折、深く吐き出される溜息に子犬が心配そうに少女を見上げる。
彼女の手には1枚の紙。
近付いてみると、それが午前中に配られたセットリストの一覧だということが分かる。

「レーニ」
背後から声をかけると、レニは特に驚いた様子もなく振り返った。
恐らく気配でとっくに気付いていたのだろう。
「…何か用?」
「んもぅ、ツレナイでーす!」
そっけない態度(いつものことだが)のレニに、織姫は口を尖らせる。
しかし、そんな織姫に特に反応するわけでもなくレニは姿勢を元に戻し、再び手の中のセットリストを見つめた。
唇からは零れるのは、やはりため息ばかり。

そんなレニを見かねて、とうとう織姫は本題を突きつけた。


「…『悲しみを越えて』、ですか?」

セットリストの中にあったメドレーの中の1曲の曲名に、レニはびくりと反応する。
そうして、今度はしっかりと織姫の方を向いた。
蒼い瞳には、どうして分かったんだという表情がありありと浮かんでいる。

「ふっふっふ。ニボシですねー?」
「…それを言うなら、『図星』」
「誤魔化そうとしてもダメでーす!どうしたんですかー?せっかくマリアさんと歌う曲なのに、溜息なんてついちゃって」
自分の言葉の間違いはひとまず棚に上げ、織姫はレニに理由を追及するべく彼女に詰め寄る。

帝都花組きっての男役であるマリアとレニは、恋仲同士なのだ。
自分はそれを日々からかい…もとい、応援している。

「マリアさんとごめんねー、だの愛してまーす、だの歌いあうんですよ?堂々とイチャつけばいいデース!」
「…だから嫌なんだ」
溜息交じりに、しかしはっきりとしたレニのこの言葉に織姫は言葉をとめた。

実は、セットリストにこの曲名を見つけたときに織姫は咄嗟に揶揄するようにレニを見たのだ。
しかし、レニは予想とは180度違う表情を浮かべており、ひどく落胆したように見えたのだった。
あのときは見間違いかと思っていたが、やはりあれは事実だったのだ。
織姫の頭に、最悪のシチュエーションが思い起こされる。

「ま、まさかレニ、マリアさんと別れ…!?」
「…てない」
織姫の邪推を、レニは短い言葉で一蹴した。
否定されたことに内心で安堵しつつ、織姫はレニにまくしたてた。
「じゃあ、どうしてイヤだなんて言うんですかー!この曲を歌うのも初めてじゃないでしょー?」
『アラビアのバラ』稽古中・公演中に何十回と言わない回数をふたりで歌っているのだ。
これが同じデュエットでも、『春風の恋歌』なら、彼女はきっとこんな反応をしなかったはずだ。

不審そうな織姫を前にレニは暫くだんまりを決め込んでいたが、やがて観念したのか理由を口にした。
「だって、あのときは…まだ、だったから…」
「まだ?」
全く説明になっていないレニの言葉に首を傾げた織姫は、暫くしてからその意味に気付いて納得した表情を浮かべる。
(ははぁ…)

『アラビアのバラ』を演じたとき、ふたりの心はまだ通じ合っていなかったのだ。
しかし、レニはマリアへの想いを自覚していた。
だから、あのときは歌詞どおりに歌に心を込めたのだ。

『こんなにもあなたを愛しているのに…』

隠さなくてはいけない、気付いて欲しいという矛盾した思いを浮かべながら。
報われることの無いであろう秘めた想いをのせ、レニはマリアへとこの曲を歌っていた。

しかし、この公演を終えて暫くして、晴れてふたりは両思いになったのだ。
だから、『マリアの気持ちを知った後の状態』でこの曲を歌ったことは一度も無い、と。

「…この曲は、あのときのことを思い出すから…恥ずかしくて…」
最後の方は消え入りそうな声でぼそぼそと恥ずかしそうに呟くレニは、まさに『恋する乙女』そのもので。

「はいはーい、ごちそうさまデース」
からかいにきたつもりが、結局惚気を聞かされてしまった織姫はおなかいっぱい、といった表情でレニに軽く手を振り中庭を後にした。

先程までの勢いから一転、あっけなく去っていった織姫の背を見送り、中庭にひとり残されたレニはフントと目を合わせて首を傾げる。
「なんだったんだろう。ね、フント」
「クーン?」
…無自覚の惚気ほど、怖いものはないということだ。

 


部屋に戻ろうと2階の廊下を歩いていた織姫の目に、先程まで自身がいたベンチが映った。
そこでは、相変わらずレニが座り込んでセットリストを眺めている。

その背後から、同じ紙を持った女性がレニに近付いていた。
彼女と一言二言言葉を交わし、ベンチに座る。
セットリストを手に広げ、何かを話しているようだ。
肩の上で揃えたプラチナブロンドを初秋の風に靡かせる麗人に、レニが躊躇いがちにそっと寄り添った。


――織姫だけは知っている。
セットリストを見たときに浮かべた、レニの苦い表情。
それと全く同じ表情を、彼女の恋人は浮かべていたのだ。
やはり似たもの同士、お似合いということなのだろう。


(ま、本番を楽しみにするデース)


これ以上の詮索は野暮だろうと、織姫は中庭から視線を戻して自室へと足を向けた。


おしまい。


*******************************************

書き逃げ第二段。

まさかあるとは思ってなかったこの曲。
最後の『野暮』のところ、『ヤボー』って書きかけたけどw

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