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日々のいろんなことをあれこれ。

   
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マリレニ小ネタ『花とともに』
マリレニ突発小ネタ


なんと「レニ」という単語が一度も出てきていません。
でもマリレニ。


花とともに


――劇場に、花が届いた。


「マリアさん、お花が届いていますよ」
正確には、マリア宛に。


劇場に花が届くというのは、そう珍しい話ではない。
例えば、公演中…特に初日や千秋楽。
役者の誕生日。
劇場の記念日など、ここ大帝国劇場では事あるごとに花が贈られてくるのだ。

しかし、今日は何の変哲もない、『普通の日』。
前記のように公演中や役者の誕生日ならともかく、今は休演中で、こんな時期に贈りものがあるのは珍しいことだった。
そのせいだろうか、そんなかすみの一言に花組のみんなが反応する。
今日はみんなで昼前からサロンに集いトランプ遊びに興じていたのだが、突然飛び込んできた興味深いネタに関心が向いたようだ。
「…私に?」
名前を呼ばれた本人は驚いた様子で椅子から立ち上がり、かすみから花を受け取る。

花、と一言で言っても、贈られてきたそれは小ぶりのフラワーアレンジメントで、部屋の机に飾るのに丁度良い大きさだった。
白い薔薇を基調とし、整然とまとめられた花々がラッピングされたバスケットに活けられている。

「わぁ、すごーい!きれいなお花だね!」
目を輝かせ、アイリスはフラワーアレンジメントを覗き込んだ。
「でも、ちょっち地味じゃないですかー?」
その横から花を覗き込んだ織姫は、少し不満そうに口を挟む。
「まぁ織姫はんなら真っ赤な薔薇の方が好きやろうけど…マリアはんはこういうのが好きなんと違います?」
「マリアさんの好みをよく知ってるみたいですね」
「そうね、本当に綺麗」
見た目と同様、上品にふんわりと香る生花に、マリアはうっとりとした表情を浮かべる。
その花の束は、マリアの気品そのものを表しているかのようだった。

「…それで、誰からだったの?」
花組の誰もが一番気になっていたことを、さらりと聞いたのはたまたまサロンを通りかかったかえでだった。
「それが…差出人のお名前が書かれていなくて」
マリアの代わりに、少し困ったようにかすみが答える。
彼女の話によれば、事務局で席をほんの少し外している間にカウンターにこの花が置かれていたというのだ。
「そうそう。それに、『マリアさんへ』ってだけで、メッセージもも何も添えられてないのよ」
ゴシップのかおりを嗅ぎつけたのか、かすみに付いて来た由里も興味津々な表情で口を挟む。

「まぁ、どう見ても花だし、怪しいものじゃなさそうだから大丈夫じゃねぇか?」
花より団子、という諺がよく似合ってしまうカンナも、そのアレンジメントを珍しそうに覗き込んだ。
過去、マリア宛に贈り物を装った不審物が送られてきてから、劇場の贈り物に対する安全面についてはかなり向上しているはずだ。
「それにしても…本当に、誰からなんでしょうね?」
果たしてこれが不審物なのか、誰からのものなのか、意図は何なのか…花組のみんなは探偵気分で推理を繰り広げていった。
そのやりとりを、渦中の人物であるマリアはただ黙って笑顔のまま見守っている。

「マリアさーん、黙って見てないで一緒に考えてくださーい!」
それに気付いた織姫が、口を尖らせてマリアに抗議した。
「せやせや。…それともマリアはん、これが誰からか分かってるんちゃいます?」
「えぇ、勿論よ」
「えぇっ!?」
織姫に同意し、冗談混じりに告げた紅蘭の言葉に当然のように頷いたマリアに、一同は驚きの声を上げる。


「だ、だ、誰からなんです!?」
帝国歌劇団・花組の男役トップとしてその名を轟かせる女優マリア・タチバナにロマンスの影か。
これは一大スクープかと、ますます由里が身を乗り出す。
ここに椿がいたらショックで倒れていたかもしれないが…彼女は今日は用事で外出しているのが幸いというところだ。
その答えを彼女の口から聞こうと、みんなの視線は一斉にマリアに集まり――…。

「ふふっ、秘密」

「えぇー!?」
茶目っ気たっぷりに言い放ったマリアの一言に、盛大に不満の声が上がる。

「さ、詮索はここまで。…部屋に置いてくるから、私はこれで」
尚も探りを入れようとするみんなに一言断りを入れ、マリアはひとりサロンを出て自室へと向かった。
にっこりと、有無を言わさない笑顔で言われてしまっては、これ以上問いただすことも出来ない。
マリアの居なくなったサロンでは、花組一同による探偵ごっこが再び始まったんだとか。


部屋へと足を進めながら、マリアは徐々に緩んでいく頬を止めることが出来ない。
みんなが花と差出人についてあれこれ議論を交わしている最中、ひとつも言葉を発しなかった『彼女』こそ、このフラワーアレンジメントの差出人だった。
『目は口ほどにものを言う』。
何も言わないかわりに、ちらちらと自分の反応を探るような蒼い視線に、こちらは抱きしめたい衝動を堪えるのが大変だったというのに。
(本当に…かわいいんだから)

今日は、自分と彼女の気持ちが通じ合った特別な日。
きっと彼女は、自分が気付いていなかったら気を遣わせてしまうだろうと思い、こういう形で花をくれたのだろうが…。
勿論、それに気付かないマリアではなかった。

フラワーアレンジメントの中央、純白の薔薇に寄り添うように飾られた、白いストック。
その花言葉は、『愛の絆』・『愛の結合』。
何層もの花弁で咲き誇るラナンキュラスは、『あなたは魅力に満ちている』。
控えめに、恥らうように添えられたピンクのカーネーションは『熱愛』。
カードなどなくても、そのフラワーアレンジメントには彼女からのメッセージがふんだんに織り込まれている。
そのどれもが、自分へと向けられた愛の言葉であると思うとくすぐったくなってしまう。

(…後で、お礼を言っておかないとね)
冷蔵庫に冷やしてある、以前彼女が好きだと言ってくれた甘さ控えめの手作りショコラ・クラシックを添えて。


それに、愛の言葉は本人の唇から聞きたいものだから。
自分も、それ以上の愛の言葉を彼女へと贈りたい。

 

今日は何の変哲もない、『普通の日』。

ふたりにとっては、幸せの記念日。

 


END


**************************************


2011年10月16日。

当サイトも2周年を迎えることが出来ました!
(1日遅れですが…)
これもひとえに応援してくださるみなさんのおかげです。
いつもありがとうございます!

これから3年目、ということですが…。
『3年目の浮気』にならないようにw気を引き締め、頑張りますのでよろしくお願いいたします!


沙耶

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