日々のいろんなことをあれこれ。
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もうすぐ2012ライブもあるというのに、なんで今更星組ライブ2011の小ネタかっていうと、毎日毎日車でDVD観てる(聞いてる?)から。
何回見てもいいわーマジで。最高。
あんまマリレニじゃないですが。
帝都でのかえでさん&マリアの会話。
やや暗かも?
いつもと、変わらない夏
『小さいマリアさんみたいでーす!』
「――くしゅん!」
「あらマリア、大丈夫?」
「いえ、だいじょ…くしゅん!」
かえでの問いかけに答えながら、マリアは再びくしゃみをした。
今の今まで何とも無かったので、風邪というわけではなさそうだが…。
「誰かさんが噂してるのかしらね」
苦笑混じりに告げるかえでの言葉の『誰か』をすぐに理解し、マリアもつられるように笑った。
その『誰か』は、今帝都にはいない。
「少し、休憩しましょうか」事務処理の手を止め、お茶を入れようとかえでが立ち上がった。
私が、とマリアが申し出ようとするのを笑顔のまま制し、かえでは事務室を後にする。
ひとり部屋に残されたマリアは、椅子に凭れかかりひとつ溜息をついた。
蝉の声が響く銀座・大帝国劇場はいつもと変わらない夏を迎えていた。
ただ、いつもより劇場が静かだと感じるのは、きっとあのふたりがいないせいだろう。
彼女たちは、元気だろうか。長い船旅だから、病気などしてないだろうか。
あの子は、寂しがっていないだろうか。
――寂しがっているのは、私のほうね。マリアは自嘲気味に唇に笑みを浮かべる。
「おまたせ」
少しの間感慨に耽っていると、冷たい緑茶を載せたお盆を持ったかえでが戻ってきた。
硝子のコップを受け取り、マリアは軽く礼を告げて緑茶に口を付ける。
よく冷えた緑茶が、すっきりと喉を通っていった。
「レニと織姫は、無事にニューヨークに着いたんでしょうか?」
「そうね、船が順調に進めばちょうど今頃着いてるんじゃないかしら」
「…そうですか」
『ニューヨークに、織姫と行くことになったんだ。ラチェットや、昴にも会うことになると思う』
マリアの脳裏に描かれるのは、蒼い瞳に不安の色を浮かべながら、それを隠すように口元に笑顔を作った愛おしい少女。
帝国華撃団の試験的存在として作られた部隊・欧州星組。
一流の霊力所有者を集め、様々な研究者からの期待を背負って作られたこの部隊は、わずか半年も持たずに解散してしまうこととなる。
原因は一目瞭然だった。だが、一言で言い表せるほど単純なことでもなかった。
当時は感情を持たなかった彼女だったが、今となっては色々と思うところがあるのだろう。
星組時代のことを、彼女が口にすることは滅多にない。
無理をしてまで行くことなんてない、と言ってしまいたかった。
ニューヨークなら自分の方が慣れているし、舞台の勉強というのなら自分が行ったって構わない。
――だから、そんな表情しないで。
喉の先まで出かかった言葉を、マリアはどうにか心に押さえ込んだのだ。
『大丈夫だよ、マリア』
そんなマリアの表情で彼女の胸の内に気付いたのか、レニは困ったような顔で笑った。
『昔の……仲間に、会いに行くだけだから。だから、大丈夫』
少しだけ、間が空いて仲間という言葉が零れる。
僅かに空いた会話の隙間は、彼女たちの間にあるわだかまりを体現しているかのようだった。
この再会で、わだかまりは解消されるのだろうか。
あるいは、その逆か。
それを知る由は、今のマリアにはない。
しかし、どんな形であるにせよ、きっとレニはその結果を受け入れるだろう。
自分の過去から目を背けたり、ましてそれを捨てることなど出来やしないのだ。
かつての自分がそうであったように。
今の彼女なら、受け入れることが出来るだろう。
――だから、ただ、笑顔で見送ったのだ。
「心配?」
「いえっ……別に」
突然問いかけられたかえでの言葉に主語は無かった。しかし、自身の心の内を見透かしたかのようなその言葉を、マリアは慌てて否定した。
結果的に肯定の返事をしたようなものだ。
マリアはばつの悪い表情を浮かべ、話の矛先を自分からかえでに向けた。
「そういうかえでさんこそ、心配なんじゃないですか?」
「……そうね」
ややあって、かえではぽつりとそう呟く。
いつもの調子で否定されると思っていたマリアは、思わぬかえでの返答に動きを止めた。
そんなマリアの反応が可笑しかったのか、かえでは再び柔和に笑う。
「あら、意外かしら?」
「いえ、そういうわけでは…」
意外というわけではなかった。彼女もまた、過去に欧州星組に関与していたからだ。
今回レニと織姫のふたりをニューヨークへ向かわせ、欧州星組のメンバーと再会させることにしたのも、かえで自身何か思うところがあったのだろう。
「心配だけど…大丈夫よ、あの子たちなら。きっと、上手くいくわ」
あの子たち。その言葉は、レニと織姫だけを指したものではなかった。
少なくとも、マリアにはそう感じられた。
「レニも織姫も、変わった…成長した、って言うのかしら。あの頃とは違うもの」
何かを思い出すように、その先を想像するように、かえでは静かに言葉を紡ぐ。
レニと織姫はここ帝都で花組に出逢い、自分の心を少しずつ開いて、やがて本当の意味での仲間となった。
そのふたりが、欧州星組という過去と向き合う。
正面から向き合えるほどに、変わったのだ。
「ふたりとも、あの頃とは違う…でもそれは、きっとあのふたりも同じ」
星の名を継ぐ、新しい小さな輝きの元に集ったふたり。
きっと、彼女たちも――…。
「……だから、私はあの子たちを信じるわ」
いつもの優しい口調と違わぬまま、しかしはっきりとかえでは告げた。
「かえでさん…」
「…さ、休憩はおしまい。書類を片付けてしまいましょう」
少し照れくさくなったのか、かえでははにかんで視線を書類へと移した。
マリアもそれに倣い、再び事務処理の手を動かし始める。
「かえでさん」
「何?マリア」
「…私も、本当は心配なんです。…でも、私も、信じてます」
なんとなく本当のことが言いたくなって、マリアは静かに告げる。
「ふふ、知ってるわ」
そんなマリアに、かえではやはり柔和な笑顔で応えたのだった。
「…早く、帰ってきて欲しいですね」
「…えぇ」
蝉の声が木霊する、いつもと変わらない夏。
一層輝きを増し、美しく咲く二輪の花を帝都で見ることになるのは、もう少し先のことである。
END
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書き終わった後に気付いた。
時差どこいった。
書き終わって気付くとこがなかなかアホです。
…気付かなかったことにしよう…。