忍者ブログ

日々のいろんなことをあれこれ。

   
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

マリレニ?小ネタ『恋と愛』
今回もやっぱり小ネタ。

小ネタっていうかもう小ネタの枠を超えてます。
普段書くSSより長い…。
でもライブネタなので小ネタ。

テーマは、『愛と恋について』。
ラチェットメインですが、マリレニで。

すっごいくだらないネタなので、読み流して頂ければ幸いです。


マリレニ?小ネタ『恋と愛』


とある夏の昼下がり、紐育・リトルリップシアターにて。

それは、懐かしいメンバーとの静かな再会――に、なるはずだった。

 

「チャオ、昴」
「昴。…久しぶり」
過去、欧州星組の一員として行動を共にしていた4つの星が、ここ紐育の地で再び巡りあった。
4人の間には、穏やかな空気と…その中に混じり、ほんの少しの緊張感が流れている。
その空気と沈黙を壊すように、昴はゆっくりと口を開いた。

「相変わらずだな、織姫は……が、君は変わったな、レニ。……恋でもしたのか?」
揶揄するような昴の言葉に、レニも顔色ひとつ変えずにそれに答える。

「恋してるんじゃない。愛してるんだ」

突然のレニの告白…もといカミングアウトに、その場いた星組一同が色めきだつ。
ちょうどラッシー先生から『恋をすれば情念が湧き出でる』なんて話を聞いた直後だ、無理も無いことだろう。
「恋!?」
「愛!?」

「ふぅん、それは初耳だわ」
面白いことを聞いた、と言わんばかりにラチェットの瞳には好奇心の色が浮いていた。
あのレニが、恋を。
欧州星組時代の彼女をよく知る身としては、これ以上ないほどに気になるニュースであった。

「そのお相手を、是非教えて欲しいんだけど」
「教える必要が無い。義務もない」
「命令でも?」
「命令されるいわれはないよ」
確かに、今のラチェットにはそれを問いただす権利はない。
上司と部下、という関係も遠い過去の話だ。

しかし、ここで引き下がるラチェットではない。
笑顔を崩さぬまま、ちらりと横目で織姫を見やった。
普段は自分からホイホイと喋ってしまう織姫だったが、今回は珍しく口を噤んでいる。
噤んでいる、というよりは、ラチェットの尋問をレニがどう切り返すかを見て単に面白がっているようだ。
今の反応から、織姫はレニの『愛している』相手を知っているのだろう。
(…ということは、私も知っている人物、かしら…?)
こちらを攻めるべきかとも考えたが、彼女もそこまで馬鹿ではない。
軽くかわされてしまうのがオチだとラチェットは瞬時に判断する。

このまま正面から聞いても駄目だと判断したラチェットは頭を回転させ、やがて浮かんだひとつの案に狙いを定める。
そうして、わざとらしくひとつ溜息をついた。

「…でも、恋してるんじゃないのに『恋人』っていうのは、なんだかおかしい話なんじゃない?」

更に追求の手が掛かるかと思っていたレニは、そんなラチェットの予想外の言葉に耳を傾けた。
「…どういう意味?」
「そのままの意味よ。あなたが自分で『恋してるんじゃない』って言ったじゃない。だったら、『恋人』だとおかしいんじゃないの?」
「ということは、恋の相手が『恋人』で、愛の相手だったら……『愛人』になるのでしょうか?」
ラチェットの言葉を補足するように、ダイアナが考えながら言葉を紡ぐ。
一応、理に適っているといえば理に適っている言葉だ。
――『愛人』という単語が、日本語では全く別の意味だと知らなければ、の話だが。


「そうね。それに、恋は日本で…漢字だとこう、書くでんしょう?」
その場にあったメモにラチェットは『恋』の字をさらりと書く。
普段あまり日本語を見慣れない星組のメンバーは、点と線が交じり合った奇妙な文字に感心した声を上げた。
「そして、愛はこう」
その横に、ラチェットは先程より少し複雑なつくりの『愛』という漢字を書いた。
「この字には両方『心』…ハートという意味の言葉が含まれてるけど、この文字の位置が不思議だと思わない?」
「位置?」
ラチェットが何を言いたいのか分からず、一同は首を傾げるばかりだ。
その中で唯一、彼女の言わんとすることを理解した昴は、それを解説するように静かに口を挟んだ。
「その文字の位置から、日本では恋は下心があるが、愛には真心がある…なんて謂れがある」

「んん?シタゴコロてなんだ、しんじろー?」
たまたまその場所を通りかかった新次郎はリカに突然そう問われ、質問の内容が内容なだけに思いっきり動揺する。
「え、下心!?なんでそんなことを!?」
「恋には下心がある、って日本では言うの…大河くん、聞いたことない?」
ラチェットが説明すると、新次郎もその謂れを聞いたことがあったのか頷いて見せた。
「確かに、そんな風に言いますね。リカ、下心っていうのは…うーん、やましい気持ち、かなぁ」
「ヤマシイ?」
「えーっと、やましい、っていうのは…」

「他人のシャワーを覗いたりすることだ」
「体が勝手に動いたりして、な」

昴とサジータに補足という名の制裁を受け、新次郎はそのまま固まってしまった。
「そうかー、じゃあしんじろーはヤマシイんだな!」
そこにリカが華麗に止めを刺す。
みんなの冷ややかな視線が新次郎に集まり、劇場には一瞬にして同情のような、哀れみのような空気が漂った。
「……血は争えない、ってヤツですかねー」
「…同感」
今頃、帝都の空の下でくしゃみでもしているのではないかと思われる彼の叔父を思い浮かべ、織姫とレニはしみじみとそう口にした。
「えぇっ!ちょ、ちょっと待ってください!誤解ですよ!!」
ようやく我に返った慌てて新次郎は否定しようとするが、時既に遅し。
…彼は確実に、大神家の血を引いているのだと思われる。


「じゃあじゃあ、『コイビト』じゃなくて『アイジン』じゃないと、シタゴコロばっかりってこと!?た、た、大変だよ!!どうしよう!!」
「えぇ…何か理由があるのかもしれないけど、愛しているというのなら『恋人』なのはどうなのかしら、って…」
まるで自分のことのように焦るジェミニに、ラチェットも賛同するように頷いた。

(それって、違うんじゃあ…)
愛人の正しい意味を知る生粋の日本人、新次郎は心の中でそう呟いた。
しかし口を挟もうにも、先程の会話の流れから、哀れ彼は事の成り行きを見守ることしか出来なかったという。


さてこちらは、もうひとりの哀れな恋する…ならぬ、『愛する乙女』。
彼女がもう少し色恋沙汰に関する熟語を知っていればこんなことにはならなかったのだろうが…。
(恋人…愛人…)
遠い地――帝都で自分を待つ大好きな彼女の笑顔と共に、レニの頭の中はそのふたつの単語でいっぱいになっていた。

 

 


それから暫くして、レニと織姫のふたつの星はあるべき場所…帝都へと戻っていった。
星の輝きを、美しい花として咲かせるために。
その後リトルリップシアターでも新次郎が張り切り、それを星組のみんなが支えたおかげか客足も戻りつつあり、ようやく『日常』が戻ってきたという風に感じられていたある日のこと。

リトルリップシアターに、キネマトロンの通信音が鳴り響いた。

たまたまその場に居合わせたラチェットが、何事かと通信のボタンを押す。
「はい、こちらニュー…」
『ちょっとラチェット!あなた一体どういうつもりなの!?』
ラチェットの挨拶が終わるよりも早く画面の向こうで捲し立てたのは、帝都花組の男役としてスポットライトを浴びる麗しい女性――マリア・タチバナ。
…ただ、今の彼女には憤怒と表現するのに相応しい表情が張り付いている。

「ハイ、お久しぶりね、マリア。どうかしたの?」
すごい形相のマリアにも動じることなく、ラチェットは軽く挨拶をした。
ただ、それは彼女にとって火に油を注ぎこむような行為で…。

『どうしたの、じゃないわよ!帰って来るなり、レニが『恋人じゃなくて愛人にして欲しい』って言い出して…!』
「あら、それは大変ね」
『そうラチェットに言われた、って…貴女一体レニに何を吹き込んだの!』

レニはあれでいて頑固者で、一度言い出したら曲げない性格だ。
自分から『愛人にして欲しい』と言ったというレニと、そのシーンを想像するだけで思わず笑いがこみ上げてしまいそうだ。

「レニが自分から愛してる、って言ったのよ?だから、日本では『愛人』になるんじゃないの?」
『愛人っていうのは英語で言うところの"lover"で、日本では肉体関係の強い言葉で――…って、え?』
そこまで一気に捲し立てていたマリアは、ふと言葉をとめた。
そのまま、頭に手をやりひとり考え込む仕草をした後――…。

『……謀ったわね、ラチェット』

ようやく彼女の真意に気付いたマリアは、深い深い溜息と共に地を這うような声で呟いた。
ばれてしまったとしても、ここまで聞き出したのだからこちらの勝ちだ。
自身の作戦成功を内心で祝しながら、ラチェットは目の前に映るレニの『愛して』いる人に笑顔を向けた。
「謀った、なんて人聞きの悪い…私はただ、レニがそこまで言う人物が知りたいと思っただけよ」
『そのせいで私がどれだけ大変だったと思ってるの!』
「あら、そんなに?」
この際だから色々と話を聞いてみよう、とラチェットが質問を繰り出す。
マリアが更に何か言おうと口を開いたそのとき。

『…マリア、そこにいるの?』

キネマトロンの収音マイクが、別の人間の音声を微かに拾い上げた。
それは紛れも無い、渦中の人物の声で。
声のした方を振り返ったマリアは、軽い溜息と共にキネマトロンに向き直る。

『…ごめんなさい、これから誰かさんのおかげで機嫌を損ねた"sweetie"の誤解を解かないといけないの。それじゃあ、失礼するわ』
恋人、の部分をやたらと強調して、マリアは挨拶もそこそこに急いで通信を切り上げた。
通信の途切れたキネマトロンの画面には、砂嵐が映る。


「あら、ごちそうさま」
誰も居ないキネマトロンに向かい、ラチェットはそう呟いた。
あれほど動転した彼女を見られる機会なんて、そうそうないだろう。

出来ることならもう少し詳しい話を聞きたかったが――…。
これ以上本人たちから事情を聞くことは難しいだろう。
(人の恋路を邪魔する人はなんとやら、ってね)
日本で覚えた諺を思い浮かべ、ラチェットは苦笑する。
それに、ここまで知っていると分かれば、帝都に咲く情熱の赤い薔薇がいくらでも喋ってくれそうだ。

「日本語って難しいのね…ねぇ、昴?」
彼女たちのこれから先のことを想像したラチェットはやはり笑顔のままで、たまたま後ろを通りかかった昴に同意を求めた。
ラチェットに言葉を掛けられた昴は、表情を変えぬまま――それでも十二分に迷惑そうな雰囲気を醸し出して――静かに口を開いた。

「昴は言った。…面倒なことに関わりたくはない、と…」

 

…その後。
マリアから『愛人』の正しい意味を聞いたレニは可哀想なほど顔を赤くし、恥ずかしさのあまりしばらく部屋に閉じこもってしまったそうだ。
そうして、紐育では再びキネマトロンの通信音が――今度は憤慨する銀の乙女から――鳴り響いたという。

 

END

 

*****************************************


日本語って難しいよね。

 

PR
  
COMMENT
NAME
TITLE
MAIL (非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS (コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます
 
TRACKBACK

TrackbackURL

カレンダー
05 2025/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
フリーエリア
最新コメント
[12/27 氷高]
[07/05 あにょ。]
[10/13 あにょ。]
[06/25 あにょ。]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
沙耶
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
P R
Copyright ©  -- ひびこれ。 --  All Rights Reserved

Design by CriCri / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]