マリレニ？小ネタ『コイノカケヒキ』

マリレニというかレニマリ？な小ネタです。
レニマリって意識して書こうとすると難しいな…。

自分で書いててなんなんですが、これってマリレニ？レニマリ？（聞くな）
まぁどっちも好き合ってるからどっちでもいいような気がしないでもない。


コイノカケヒキ

恋には、たまには駆け引きが必要である。

「マリア…」

何をするわけでもないが、ふたりきりで過ごす、幸せなひととき。
ベッドに並んで腰掛け、マリアの隣で一緒に本を読んでいたレニが甘えるような声で彼女の名を呼ぶ。
「どうしたの、レニ？」
「ん…」
特に何を言うわけでもなく、レニはマリアに体を摺り寄せた。
眠くなったのかと思い時計を見やるが、まだそこまで遅い時間というわけでもない。
「…眠いの？もう寝る？」
一応確認するように聞いてみるが、レニはただ体をマリアに預けたまま首を横に振るだけだった。
（これは…）
マリアの経験から言えば、これはレニがキスして欲しいときの仕草。
なかなか言葉では上手に出せない彼女は、こうして時々行動で『甘えたい』のだとマリアに示す。
ふたりきりのときに、自分だけにしか見せない姿だ。
上目遣いでちらりと自分だけを見つめる蒼い瞳に極上の幸福を感じる。

普段ならすぐに行動に移すのだが、ふとマリアの脳内に悪魔の囁きが聞こえた。
（ほんの少しでいいから、焦らしてみたい…）
いつもはそんなこと思ったりしないのに。
今日は何故か、思いついた小さな『駆け引き』を、少しだけ楽しみたかったのだ。

「どうしたの、レニ？」
本を閉じ、最初と同じ台詞でレニに問いかける。
いつもと調子の違うマリアの返答にレニは困惑の表情を浮かべた。
「う…ううん、何でも…」
「何でもないことないでしょう？何かあったの？」
誤魔化そうとするレニの言葉を遮り、マリアは再びレニに同様の質問をした。
焦らすように、銀の髪を優しく撫でながら。

「何かあったのなら、教えて欲しいの。駄目かしら？」
「う…」
駄目、ということが出来ないレニは言葉に詰まる。
髪を撫でていた手を顔のラインに沿わせてゆっくりとなぞると、我慢できないのか一旦口を開きかけて、何も言葉に出来ずにそのまま閉じてしまった。

もう一押し。

「口で言わないと分からないわよ？」
…なんて嘘。
彼女のことはそれなりに分かっているつもりだ。
少なくとも、他人よりは。

もう少し。

「いじわる…」
「あら、どうして？」
含み笑いをしながらはぐらかすマリアに、レニは小さく「もぅ…」と拗ねたように溜息交じりの声を漏らした。
やりすぎたかとマリアは内心焦るが、再び自分に体を預けたレニに内心安堵する。

レニが素直に『おねだり』するまで焦らし、尚且つ拗ねてしまわないように。
そのギリギリのラインをマリアは狙っていた。

（――これが、最後…）

ボーダーラインを予測して『おねだり』を諦めたマリアが、行動に移そうとした瞬間。

体を乗り出したレニに腕を引かれ、強引に唇を奪われた。
あまりに突然のことに反応も出来ず、マリアはレニのなすがままになる。

「…キス、したくなったんだ。ボクが」
唇を離して蒼い目を細め、レニは悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
「マリアがボクの考えてることが分かるように、ボクだってマリアの考えてることが分かるんだよ」
呆然とするマリアの唇にもう一度――今度は軽く啄ばむようなキスを贈る。

「おやすみ、マリア。……愛してるよ」

先程のそれと同じ笑顔で最上の告白を囁き、レニはベッドから立ち上がって部屋を出た。

残されたのは、自分の仕掛けた罠に嵌ってしまった不幸な仕掛人。
唇にそっと指を充て、先程の少し強引な感触を思い出してひとり赤面する。
（…やられた）
恐らく、先程までのあれは彼女の『演技』だったのだろう。
自分と同じくあの瞬間を、彼女は狙っていたのだ。
チェスで自分より一枚上手な彼女は、駆け引きも一枚上手だったらしい。

それでも、レニがキスしてくれたのだから。

（『結果オーライ』、かしら…）

…あまり懲りてはいないようだった。

END