日々のいろんなことをあれこれ。
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春だし、桜ネタでマリアとレニをイチャイチャさせたい。
と思ってたら何故かこんな方向にかっ飛びました。
…違うんだ、ラブラブが書きたかったはずなのに、なんでこんなことに…。
ていうかこのふたりまだ付き合ってすらないと思うよ。
でも貧乏性なので投下。やや暗め?
帝都は今日も太陽が雲に隠れ、灰色の空からはしとしとと雨の滴が降り続けていた。
こんな天気が今日で4日続いている。
恐らく、この雨で桜はほとんど散ってしまうだろう。
廊下から中庭を見つめるレニを見つけたマリアは、その愁いを帯びた横顔に一瞬声をかけるのを躊躇い、一拍置いて話しかけた。
「レニ、どうかした?」
「あ、マリア…」
掛けられた声に、レニはゆっくりとマリアの方を振り返る。
「桜」
「え?」
「桜を見てたんだ」
そう呟いて、再び視線を中庭に向けた。
それを追うようにマリアも目線を外に向ける。
レニの視線の先には、確かに桜の木があった。
しかし、中庭にある桜の木は降り続ける雨に打たれ、薄桃の花びらのほとんどを地面に散らせている。
木には青々とした葉が残り、新緑を雨に濡らしていた。
「桜、散ってしまったわね」
つい先日までは枝いっぱいに満開の花を咲かせていたというのに、あっという間に散ってしまった。
本当に儚いものだとマリアは内心溜息をつく。
散ってしまうからこそ美しい、と言っていたのは誰だっただろうか。
「桜は、散ってしまうから美しい、って誰かが言っていた」
心の中を覗かれたのではないかと錯覚してしまうほど、思っていたことと同じことをレニが呟いた。
一瞬動揺したマリアを気にすることもなく、桜の木を見つめたままでレニは言葉を続ける。
「少し違うか…儚く散ってしまうものは美しい、って…桜も、人の命も」
(…レニ?)
先程からどこか様子がおかしい彼女をマリアは見つめる。
彼女の無表情な横顔からは感情が読み取れない。
ただ淡々と、静かに言葉を紡ぐ。
「『花と散る』…桜のように、美しく咲いて美しく散ることが出来るなら…死ぬことだって怖くないのかもしれない」
マリアが何か声を掛けようと口を開いた刹那、外の雨音が激しくなる。
曇天の空から、すべてを流してしまうかのような大粒の雫がとめどなく落ちていた。
その様子にも眉ひとつ動かさず、レニはただ桜を見つめる。
「…散ってしまった後は、ああして地面で泥まみれになって、…やがて消えてしまうのかな」
マリアに言ったのではない、雨音にかき消されてしまうような小さな呟き。
唇の動きを見ていなかったら全く聞き取れなかっただろう。
そしてマリアは、そんなレニに掛けられる言葉を持っていなかった。
「ごめん、変なこと言ったね…忘れて」
なんでもないかのように微笑みを浮かべ、レニは踵を返しその場を立ち去った。
引き止める言葉を見つけられず、マリアはその小さな背中を見送る。
(あなたが美しいと感じるのは、あなたの笑顔が儚いからなの…?)
レニの居なくなった廊下で、マリアはひとり桜の木をを見つめる。
桜は、ほんの少し残った花びらを雨に濡らし、その雫の重さに耐えかねてひらりと一枚地面に落ちた。
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